June 7, 2008

海外で暮らすということ

外国人として海外で暮らすことで、人は2つの自由を手に入れる。ひとつは自分の国の伝統からの自由であり、もうひとつは住んでいる国の伝統からの自由である。

久しぶりに日本に帰国して、短期間ではあったけれど、日本人として最低限の礼儀や態度をとろうとわりに一生懸命がんばったおかげか、そこから開放された今の生活はずいぶん楽だ。日本にいるときは、コンビニでレジ係に「ありがとうございました」と言われると、単なる形式とはわかっていてもやや恐縮したりした。私はプレッシャーを感じやすいたちなので、これが他の方にどれだけ当てはまるのかはちょっとわからない。インドにいるときは「日本人」をしなくてよい、という感覚は、少しだけなら想像していただけるのではなかろうか。

そして一方で、インドで生まれ育った人たちとは違い、外国人として、インド人の家族を持つでもなく暮らしている私には、「インド人」として振舞わなければならないという縛りはない。インドの人たちはそれぞれに家族や宗教や地域の様々な伝統の中で生きている。彼らは日本にいるときの私と同じように、その土地の伝統から自由ではない。私のような外国人はそれを興味を持って外から眺めているだけである。現地の人と結婚でもすれば、その伝統に頭から飛び込むことになるのだろう。

どれだけインドで人と親しくなろうと、土地と習慣に慣れて暮らそうと、「外側にいる人」としての立場が変わることはない。それが今は楽しく、自由で、新鮮である。そのうちいつか、それを少しはさびしいと思うだろうか。

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