November 1, 2008

企業就職の中の自由

オンラインビジネスの仕事をしているおかげで、さまざまな会社から「おたくのウェブサイトへのアクセス数をアップします」という営業電話がかかってくる。見積書にはたいてい、「クリック数に対する成果報酬制」か「月極定額制」の2種類のオプションがある。彼らにとっては仕事の内容は同じなのだが、クライアントが好きな支払い方法を選べるようになっているのだ。

私は公務員家庭に育ったせいか、商売をして暮らすという生活感覚がないまま大人になり、大学を出たとき、教員になるか研究職につくかという2通りの選択肢以外思いつかなかった。自分が一般企業の組織のしばりの中でやっていけるとはとても思えなかったし、かといってフリーランスで生きる才能も才覚もないし、という具合である。

さっきのアクセス数アップサービスに例えてみれば、3者の雇用形態は、

公務員 = 月極定額制
会社員 = 月極定額制×成果報酬
フリーランサー = 成果報酬

という感じだろうか。しかし、インドの企業で社員としてフルタイムで働いてみて、会社に勤めるのも思ったほど悪くないんだな、と少しずつ思うようになった。結局、会社員か、公務員か、フリーランスかという雇用形態は仕事の自由度の上で、さしたる問題ではないことがわかってきたのである。

ひとつには、基本的に会社では周りが適性を見て、自分の得意な仕事を積極的に回してくれる傾向がある。私は会社のブランディングとマーケティングを兼ねたポジションで働いているのだが、ブランディングのほうが面白いくてつい時間をかけているせいで、マーケティング関係の仕事の能力がさっぱりつかない。そうすると「君はこっちの仕事は駄目みたいだから、誰か他のやつに手伝ってもらおう」ということになって、その分自然にやりやすくて面白い仕事の比率が増えたりする。

もうひとつ、企業に勤めることの利点は、企画の実現が早いことである。企業には人材がある。たとえば「こんな新しい英語の教材を思いついた!」と企画を持ち上げたとき、それを実現する英語講師、ライター、デザイナー、営業担当なんかが一式そろっている。そんなの優秀な人にアウトソースすればいいじゃないかというかもしれないが、案外「外部の優秀な人」を使うよりも「内部にいる息の合った人」を使ったほうがいい仕事ができることがある。

企業就職がいい、と言っているわけではなく、単にどれだっていいのだ。どの雇用形態を選ぶかは、仕事の内容の自由度の問題ではなく、自分のお金と時間をどうやって管理するのが自分にとって心地よいのか、その部分の問題ではなかろうか。時間の自由度にしたって、9時5時生活は駄目です、というに人はフレックスタイムで働くという選択肢がある。フリーランスみたいに時間が自由すぎるとモチベーションが維持できないという人は、事務所を持てばいい。そういうことは、ホントに重要な問題ではない。

No comments:

Post a Comment