August 7, 2009

病来る ―インドの病院と家族愛

インドで暮らし始めてから、発熱性の疾患に少なくとも10回以上かかっている。ちょっと喉が痛いなー、と思うと、翌日には39度とか40度の激しい熱が一気に出る。どういうわけか、こんなに病気にかかっているのにさっぱり免疫ができない。インドの細菌が強力なのか、あるいはまわりに細菌が多すぎるのだろうと思う。

7月から仕事が忙しくて疲れがたまっていたので、週末は仕事を休んでゴアにでも行ってのんびり海を見ながらゴアカレーでも食べようかなーと考えていたのに、それどころではない。たまった疲労を解消する前に、病気が先に私を見つけたようだ。会社の極東アジア社員連名(単に台湾、韓国、日本出身のスタッフの集まりです)の清栄のみんなが企画した、三国料理パーティーにも行けない。会社のピクニックにも行けない。楽しそうな企画にいっこも参加できない。このままだと病気になるとわかっていただけにものすごく悔しいけれど、よくあることである。

一人で暮らしていると、病気になったときの処理能力がだんだんついてくる。今回なんか、まだ熱が出始めてもおらず、ほとんど症状がない時に、「あ、来る」と気づいてすかさずスーパーマーケットに行き、病気のときに食べられるものと飲み物をそろえた。総合病院に行って、医者に「熱は出てないんだけどもうすぐ出ると思う。死ぬほど寒いからマラリアの検査をしてくれ」と頼んで、夜には感染テストを一通り済ませて薬をもらった。なんでもなかったんだけれど、最近会社の女の子がマラリアにかかったのに、誤診で1週間もちゃんとした治療が受けられなかったので、念のためチェックしたのだ。

ちなみに、ムンバイのような大都市でも、街の機能は家族単位で暮らす人々のために作られていて、一人暮らしの人間には優しくない。病院に行って診察を受けると、簡単なチェックをした後で、「家族かだれか付き添いの人はいるか」と聞かれる。いない、と答えると、「じゃあ自分で受付に行って、まず診察代を払って来なさい」と言われる。この受付とやらが、病気の身で歩いていくにはちょっと遠い。お金を払って医者のところに戻ると、「じゃあ、血液検査をするから、もう一回受付に行って血液検査代を払ってきなさい」と言われる。「えー、また?」と文句を言っても、誰も代わりに行ってくれない。お金を払って、今度は自分で血液検査のカウンターまで行く。血液を採取すると、「夕方ここに結果を取りに来て、それから医師のところにもう一回行ってください」と言われる。一箇所に機能をまとめといてよ、と思うのだが、どうしてかそういうシステムになっていない。

入院したときなんかはもっと大変で、医者が処方箋を出すと、患者かその家族が薬や点滴、注射器をいちいち薬局まで買いに行かないといけない。付き添いなしで入院したりしたら、点滴が必要なほど体調が悪いのに、ベッドから起き上がって自分で薬局まで行って点滴のバッグを買いにいかなければならない。どういう理屈でこんな不便なシステムになっているのかはわからない。

まあとにかく、こういう大変さを何回も経験済みなゆえに、「病院には病気が本格的に悪化するまえに行くべし」という教訓を身にしみて学んでいる。人間、痛い目を見れば多少は賢くなるものだ。不便さからは逃れられない運命である。

今朝起きてみると、料理上手のルームメイトが野菜たっぷりのおじやを作っておいてくれた。ほかほかのおじやを食べながら、インドで暮らす人々は、多分こんな家族の愛で病気に打ち勝つんだろう、と考えた。もちろん、超強力な抗生物質の力を借りながらだけれども。(ちなみに、日本ではだいぶ前から病院で抗生物質をあんまり出さない方針になっていると思うんですが、インドの病院でもらった抗生物質をがんがん飲んでいるとどんな悪いことがおきるのか、知っている人がいたら教えてください。)

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