August 18, 2009

イス取りゲームではない

小さい組織で働くことの利点は、いろんな種類の仕事がやれることである。一方で、難点は分業化がすすんでいないために、なんでも一人でやらなければいけないことだ。なんでもかんでも。アイディアを出すのも自分、実行に移すのも自分。やったことない仕事をやることが、むしろ日常業務である(今、私の同僚のみなさんは力強く頷いているかもしれない)。そういういろいろをぎりぎりこなして、自分のポジションを徐々に作り上げていくことが、小企業で働くことの創造的な部分である。

世の中にはさまざまな能力のスタイルがある。高度に専門的な能力や興味を持ち、その一つの「深さ」を追求して生きる人もいれば、ありとあらゆることに興味をもって、自分の能力の「面積」を広げていく人もいる。前者の人が成功するためには、その能力を認めて効果的に使う優れたプロデューサーの存在が不可欠であり、後者の人が何事かを成すためには、優秀な技術者を集めることが不可欠である。また他方で、どちらの能力も対して優れていないという場合には、自分をサポートしてくれる人の存在を増やす知恵が必要である。そういう意味で、自分のタイプを見極めて、必要な環境と人脈を自分に用意できるかどうかが結構大切なのだと思う。

私自身はどうかというと、技術者・専門家タイプの人間になりたいと自分では思いながら、興味や能力を一つのことに統合することができない、という感じでふにゃふにゃとここまでやってきた。物事はあこがれたとおりの形を取らない。まだ若いころは、まだその一つに出会っていないだけだと思っていたが、どうやら自分の能力のあり方は、そういう方向性のものではないらしいと感じ始めている。いろんなことがしたいのである。なんにでも首を突っ込みたいのだ。しかし、そのためにたいていのことは未完成に終わる。こういうのは無節操で無軌道ではあるけれど、いわゆる「成功」のようなものを求めなければ、このスタイルでもあるいは品のいい人生が送れないこともないだろう。

組織・社会におけるサバイバル術は、自分の居場所を自分で作ることに他ならない。私たちは別にイス取りゲームをやっているわけではないので、イスがなかったら地べたに座ればいいのである。あるいはコンビニの車止めの上のほうが快適かもしれない。これは仕事に限ったことだけではなく、例えばグループや学校のクラスで自分の居場所がないと感じている人は、誰かが作った場所や役割の枠組みからいったん外に出て、自分で勝手に座る場所を作ってしまえばよい。そうしてみると、意外と自分と似たような離れた場所に座っている人が結構いることに気づくはずである。

そんなふうに、働くことはそれがどんな仕事やポジションであれ、かなり創造的な活動なのだ。どんなに専門的な職業であろうと、研究者であろうと芸術家であろうと、かならず社会には代わりがいる。どんなに有名なミュージシャンであろうと、死んだあとには誰かがその精神的な穴を埋める。一方で、どんなに単純な仕事であっても、人に負けない能力なんか一つもなくても、ちゃんと働く場所はどこかにあるはずだ。自分が必要とされているかどうかは問題じゃないから、とにかく座れそうなところに座ったらいい。立っていたいというなら、勝手にすればいいのだ。

2 comments:

  1. すっかり納得したので引用しました。

    ReplyDelete
  2. あ、ありがとうございます!うれしいです。

    ReplyDelete