December 11, 2008

言葉に詰まるとき

Jaya Bachchanは大スターAmitabh Bachchanの妻であり、女優である。インドの芸能雑誌「People」の10月号に彼女のロングインタビューが載っていた。ひとことで言って、「怖いおばさん」という感じの迫力のある女性である。ちなみに、彼女の息子は若手人気俳優、Abhishek Bachchan。その妻もインド一の美人女優Aishwarya Rai。ものすごいスターファミリーのいわば中心を生きている人である。

インタビューの大半は彼女と夫との関係について質問され、インタビュアーを笑い飛ばしたりにらみつけたりしながらばしばしと答えを返す。しかし、半ばで他の女性との関係がたびたび噂される夫Amitabhについて、「ああいう噂は気になるでしょう?」と聞かれると急に寡黙になり、抽象的な表現になる。

「(沈黙)・・・。人間だから、反応はします。暗く反応することもあれば、明るく反応することもある。ふるまいや、様子や、出来事によって毎秒ごとに安心させられて、それでなんとか前に進んでいく。(沈黙)・・・。傷つきやすい年齢や時期にある人はいずれにしたって自分を見失うものです。そして、悲しければ悲しいし、幸せならば幸せなのです。」

かなり正直に答えている印象である。これまで何度、マスコミから同じような質問をされたのだろう。しかし、何十年と繰り返されている質問だとしても、まだ冗談では返せないことが人にはあるのだなあと思った。嫉妬や憎しみをかみしめながら家族の中に留まり続けているからか、Jaya Bachchanの口元は普通の人よりずっときつく締まっているように見える。そういう生き方を「執着」と呼んで嫌う人もいるかもしれないが、私はそういうさわやかでない部分を持っている人に惹かれてしまう。

自分が60代になったとき、彼女のような眼光鋭いこわもておばさんになっていたいとはあんまり思わない。できれば余計な苦労をせずに暮らして、どこまでも力の抜けたおばさんがいい。でもまあ、きっとそうもいかないのだろう。

何に耐えて、何に耐えないのか。

長く暮らせば暮らすほど人に語るエピソードは増えていくが、それと同じだけ語ることのできない話も増していく。そして、語られない話が積もれば、それがふいに言葉を詰まらせる引っかかりになっていくのだろう。自分があの年になったとき、いったい何に言葉を詰まらせているのか、何を越えられずに暮らしているのか、まったく想像がつかない。

2 comments:

  1. このたび、うちのパートナーが証券会社をクビになった。のっけから金融不況の波にノリッノリ状態。だから二人でまたニューヨークに帰るという話も出てたりで、タナボタ式超エクサイテッドだったわけ(私はね)。
    いやしかし、それを他の人に喋ったときの反応がすごい面白いの。
    「それがどうしたのっ?」っていう人あり、黙りこくってあたしとの会話が一秒でも苦痛に思ってるであろう人あり。中にはいきなり「クビになった方と喋るのはちょっと・・・」とハッキリ言う人もいたり。
    一番嫌だったのが「元気に振る舞ってらっしゃるだけでしょう?本当は大変なのよねぇ。平気なわけないわよねぇ。」って言われたこと。
    人はものを訊ねるときそれなりの相手からの反応を期待してるんだなぁ、とつくづく思いました。
    ちなみに私たち、大丈夫といえば大丈夫、大丈夫じゃないといえば大丈夫じゃないって感じなので、その大女優+政治家の彼女がそのように抽象的に答える気分がちょっとわかる。
    「あんたなんかにあたしの気分がわからない」
    と、
    「あんたにもこの気分が確実に判って欲しい」の狭間に揺れているのかもしれないわね。

    しかしアイシュワリヤ・ライの旦那ってイカすわぁ。インドってすげーわ(何がよ)。

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  2. 「クビになった人と喋るのはちょっと」ってのもすごい反応だなあ。しかし、他人のいわゆる「不幸」にどう反応するかって、すごくその人物の本性が出そうで怖いですね。あたふた結論をつけて自分が理解しやすいようにまとめようとしないで、聞いたまま受け止めてくれるのが一番ありがたいと思う。当事者としては、じゃあどうするか、ってところで話していて感情的な反応をされると困ってしまうね。でもほんとにまあちゃん、ひょっとしたらニューヨークに移るの?それはちょっと興奮。複雑ですね。

    ところで、アイシュワリヤ・ライの夫は私にはちょっとマッチョすぎてどうも…。インドの俳優ってとにかく派手ですね。

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