May 31, 2008

アリババ店主の理屈

石ころは思いがけない方向にころころ転がるもので、インドで二度目のモンスーンを迎えようとしている。5月の最後の週になってから、少しずつ青空を覆う雲の面積が増えてきた。予報では来週中に最初の雨が降るという。

5月中に久しぶりに日本に一時帰国して、家族や友達など都合がつく人たちにできるだけたくさん会ってきた。私の出不精に似合わず、榊原温泉や伊勢神宮に行ったり、熊野古道を歩いたりしました。和食がなにを食べてもおいしかった。日本に着く前は、さしみ、すし、うなぎ、なっとう、たけのこごはん、ラーメン、お好み焼き、うどん、そば、カレーライス、牛肉、豚肉…と念仏のように唱えて、想像上の和食を拝んで暮らしていたが、それらもしっかり成仏してくれるほど、みんなが協力していろんなものを食べさせてくれた。

インドに3週間ぶりに帰ってきて何を食べたい?と聞かれて、考えた挙句、行き着けのレストランのフレンチフライと卵ヌードル、という取り合わせになった。ほんとは一番大好きなタリー屋「アリババ」のタリーが食べたいんだけれど、どういうわけかずっと屋根の工事をしていてタリーが出せないという。

よくよく話を聞いてみると、「タリーは人気メニューだから、タリーを出すとお客さんがたくさん来てしまう。しかし屋根がないからたくさんの人を収容できない。だからタリーを出さないで人気のないメニューだけしばらく出す」という。理屈は通るけれど、それにしても奇妙な理屈である。アリババ店主はメニューを差し出しながらさりげなく高いもの勧めるやり手の商売人のはずなのだが、やる気があるのかなぁ、と少し疑う。こういう、商売人が心底がっついていないところも、このあたりで暮らすことの気持ちよい点ではあります。