ずっと若いころ、「深夜特急」の中で、沢木耕太郎が金子光春が「人間、27歳までに外に出なければならない」といっているのを聞いて旅に出た、という話を読んだ。それで、自分も27歳になったらでかい転機が訪れて思いがけない場所にいるのだろう、とくに根拠もなく信じていた。故郷の田舎町を離れてインドに上京(?)してきたのが28歳になる10日前だったから、気づいてみればその予想は当たっていたわけだ。あるいは、無理やり自分の信念に人生を合わせた、とも言えるかもしれない。
「想像せよ、しからば叶えられん」
というのは、今の会社の前のインド人の上司の格言である。プロジェクトを進めるときに、例えばこのプロジェクトを成功させればお客さんがこんなに来て、電話がじゃんじゃん鳴って、という具体的なピクチャーを頭に描いて仕事をすればそれが現実になるが、そのイメージを持たないで仕事をしていても成功しないというのである。
最初に聞いたときにはあまりにもポジティヴで思わず笑ってしまったけれど、実際、これは人生におけるひとつの真理である。自分が27歳「以内に」インドに来たというエピソードもこの一事例なのだ。頭の中でどんなことをイメージするかが現実の行き先を決めるのである。悪いことが起こると想像していたら、悪いことが本当に起こってしまう、あるいは、直接的間接的に、起こしてしまう。村上春樹は「海辺のカフカ」の中で、「夢の中で責任は始まる」と書いているが、たぶん本当にそうなんだろうと思う。
たとえば、よくある適用例を上げると、なんだか知らないけど何度も似たような恋愛をしてしまうとか、いつも似たような理由で分かれてしまうという人なんかは、案外付き合い始めた時点で同じような結末を頭に描いてしまっているのではないか。「彼が浮気して、最後自分が見捨てられる」というイメージを自然ともっているは、そのイメージが現実の関係に響いているんじゃなかろうか。
とりあえず、まだ起こっていない悪いことを想像して憂鬱になって部屋にこもってしまうタイプの人は、想像力のベクトルを変えてみたほうがいいかもしれない。と、人に言うようにして自分に言い聞かせている毎日である。
July 15, 2008
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