日曜日の朝、ぐったりした気分で目を覚ますと、もう10時を回っていた。ゆっくり朝食を食べてからバスルームに行くと、バスルームからベッドルームの床一面が浅い足洗い場のように水で埋まっていた。水桶の水を代えようと水道の蛇口をひねったまますっかり忘れていたのである。
私はこの種の自分の過ちに慣れているのであまりショックは受けない。「我、愚かなり」と心の中でつぶやくだけである。新聞の束を床に撒いてみたが、水の量が半端じゃないのでまったく役に立たない。水なんだから放っとけば乾くだろうという結論に至って、扇風機を最大風量で回して外に出た。
ムンバイの10月はものすごく暑い。家から歩いて30分ぐらいのところにあるショッピングモールのレストランで冷たいビールを飲みながら本を読んだ。このレストランは他には珍しく、ランチタイムにビールを飲みに来る若いカップルや友達同士で結構席が埋まっている。ビールの後にデザート代わりにピニャ・カラーダを頼んだ。ココナッツミルクがたっぷり泡立っていてかなりおいしかった。一口一口が濃いので、本を読むのをあきらめてしばらく味だけを満喫して何も考えずに時間を過ごした。
家に戻ると、水はほとんど乾いていた。水のことなんてすっかり忘れていたので、最初、なんでこんなに床が汚れているんだろう?と不思議に思った。雑巾がけをしたら、床は何事もなかったようにきれいになった。
昔、行き詰っていたときに、大学の先生に、「君は友達と酒を飲んで愚痴を言い合ったり、寝る前にテレビを見ながらぼーっと過ごしたりすることはあるのかな?」と言われたことがある。当時はノイローゼのように勉強していたから、枕の左右に分厚い本の山ができていて、テレビや映画はろくに観なかったし、友達からの誘いもことごとく断っていた。「一生懸命やっている」とか「必死でやっている」こと何か重要だと信じていたころの話だ。どうやったら人生のハイライトだけをつまんで生きられるのか、と真剣に悩んでいたことを思い出す。そんな疲れる人生、今なら絶対ごめんだよな。
落ちも結論もない、ある日曜日であった。