December 2, 2008

カフェ・レオポルドの再生

今朝から会社で担当している日刊メールマガジンの原稿を書いていたのだが、さっぱり面白いネタが浮かんでこない。最近の習慣で、隣に座って忙しそうにしているマネージャーに「Help me~」と助けを求めたところ、「うーむ」としばらくあごにこぶしをあてて悩んだあと、「あ、そういえば、きのうSがカフェ・レオポルドに行ったらしいよ」と教えてくれた。Sは最近入った新しい英語講師である。

カフェ・レオポルドは例のムンバイのテロ事件で最初に銃撃が始まった現場である。水曜日の夜にたくさんの人が死傷した現場が、日曜日の朝にはもう朝食を始めていたという。その打たれ強さにびっくりしてしまった。

S君に話を聞いてみると、「いやー最高だったよ。すごく込んでて、店に入るのに15分は待ったかな。前とまったくかわらず騒々しくて、人で満杯で、ビールがうまくてさ。」と教えてくれた。各国のテレビクルーがいっぱい押し寄せていてそれがうざったかったのと、壁に銃弾の跡が生々しく残っていたのが事件をどうしても思い出させたけれど、と彼は言った。そりゃそうだろう。

会社の先輩にその話をすると、「きっとテロには屈しないという姿勢を示したんだろうね」と言った。そうかもしれない。人が死んで転がっていた写真の記憶がまだ鮮明な床の上でそんなに早くビールを楽しめるもんだろうか、という疑問がよぎったが、ひょっとしたらそういうことではないのかもしれない。ひどい事件があったからこそ、楽しく幸せにビールを飲むことがある種のリベンジになるのかもしれない。

今週になって自分が明るい気分を取り戻している事に気づいた。事件から1週間は気持ちが不安定でへとへとになってしまっていたけれど、明らかに回復しつつある。怪我もなく、健康で、家族や友達もみんな元気で、やるべき仕事があって、そんなに長くはゆううつでいられないものらしい。壁の銃弾の痕跡みたいに記憶は残る。そこから与えられた問題は山のようにある。そして、それとはパラレルに、たのしくのんきな普通の日々を暮らしていくのである。その複層構造と混沌を否定せずにまるっと受け入れられるようになりたいと思う。

カフェ・レオポルドのざわめきはその気持ちに重なるような気がする。しばらくしたら、私もビールを飲みに行ってみようと思う。

2 comments:

  1. よいニュースだね。
    こういう時こそ大事な姿勢だと思うな。
    インドに行くが楽しみです。

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