暑い。今年のムンバイは特に暑くて、4月上旬の今、昼間確実に40度を越えている。オフィスからランチをたべに外に出た瞬間に、「うおおお、あちいいい」と叫ばずにはいられない。
日本では岩盤浴がはやっているが、4月の第一週目の気温と湿度は日本の岩盤浴場と同じであった。空気が体温よりやや熱いぐらいで、じんわり汗をかいて、おお、これは肌と健康にとってもいいに違いない、と思っていた。しかし、第二週目を過ぎると恐ろしいことに、今の気温は韓国式サウナである。分厚い麻のブランケットを体にかけて、タンドールかピザの窯みたいな部屋に入るあれだ。日中の日なたは暑さでとても立っていられない。
インドは南国である。
しかし、4月、5月の一番暑い時期はマンゴーの季節でもある。町中でマンゴーが売っている。スーパーマーケットや果物マーケットだけではなく、道端で商人がマンゴーの箱を担いで売り歩いている。日本でもマンゴー味のデザートはずいぶん人気だけれど、自分で買うにはちょっと高級フルーツですよね。インドでは1個10ルピーぐらいから売っていて安いし、めちゃくちゃおいしい。夏のインド旅行は避けようと思っている方、マンゴーを食べまくるためにこの灼熱の時期にムンバイに来るのもひとつ、オツなプランだと思いますがいかがでしょうか。
大体5個ぐらいをまとめて買っておいて、朝ご飯のときに1個むいて食べる。眠たい朝も、あまいマンゴーを食べると幸せな気持ちになって目が覚める。ときどき晩御飯の後にちょっとお腹がすいていると食べることもある。ふにゃふにゃのマンゴーの果肉をそそっていると、頭がマンゴー色になってまったくいろんなことがどうでもよくなる。マンゴーはおいしいからいいじゃないかいいじゃないか、という感じになって、「あーやっぱマンゴーうまいなー」とつぶやいて布団に入って眠ってしまう。
そもそも私はトロピカルフルーツの類が大好きで、日本に住んでいたときも時々奮発してパパイヤやアボカドやドラゴンフルーツなどをときどき買って食べていた。りんごは硬いし、みかんはすっぱいし、柿はえぐいし、日本のフルーツにはちょっと苦くて意地悪な部分がある。しかしトロピカルフルーツにはそれがない。やわらかくてただただ甘くて幸せいっぱいなのだ。こういう分かりやすい幸せが大好きである。
ドラえもんの道具のなかに「苦労アメ」とかなんとかいうのがあった。のび太の父が「苦労するほど人は立派になる」と説教したために、のび太が苦労したがってドラえもんに出してもらった水あめみたいなやつである。なめると軽い苦労が訪れて、人を立派にしてくれるのだ。
人生の辛酸は人を成長させるとは思う。自分にも、あの痛い経験がなかったら今の自分はない、と思う出来事がいくつかは思い出せる。しかしいっぱい苦労してきた人が意固地で根性曲がりになる例もけっこうあるわけだし、自分も他の人も、一生苦い思いをしないでハッピーにのんきなままやっていけたらそれだけで十分である。いちいち苦労アメなんかなめなくても、つらいことは絶対にやってくる。自分から追い求めることはない。
ということを考えながら甘く熟れたマンゴーを毎日食べている。毎日みんなでマンゴーを食べて暮らせたらこんなに幸せな事はない。あと2ヶ月。その後は、激しいモンスーンがやってくる。
April 10, 2009
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