November 25, 2008

ひとりで食べる蟹

「君が一人で子育てできるわけないよ。一人で食事したこともないくせに」
「あるわよ!一人で食べたことぐらい」
「いつだよ、言ってみろよ」
「みんなが食べ終わって席を立った後で、私だけ残って食べてるとき!」

というのは、ドラマ「フレンズ」の一場面である。世の中には一人で絶対に食事をしない人もいれば、一人でばかり食べる人もいる。好んでか仕方なくかは別として、結果として。皆さんはどちらですか。私は後者です。単なる習慣として、自分のための朝ごはんを作って、昼に頭に浮かんだものを近所の店に食べに出て、夜は冷蔵庫にあるものを使って何か作って、時々人の作ったものが食べたくなったらレストランに立ち寄る、という感じだ。もちろん人と食べるのも好きである。

こういう生活をしていると、だんだん「食」が生活の中心を占めてくる。人と一緒に何か食べるときには、自分以外の人のコンディションや好みがメニュー選びに影響するから受身になりがちだが、ひとりの食事が習慣になると、「次は何食べよう」、「明日の朝、私ははたして何を所望するだろう」と食事のアイディアを常に頭のどこかで考えている。どうも胃が重いから今日は野菜にしようとか、元気が落ちてきたから肉を食べよう、などなど。この「体に食べたいものを聞く」という習慣が、中国漢方の医師を自前でやってるみたいでなんだか楽しい。

問題は、インドのちゃんとしたレストランでは一人で食べられるメニューが揃っていないことである。週末に旅行ガイド本に載っていた蟹の写真を見ていたらどうしても食べたくなって、インド門の近くの中華レストラン「リンズ・パビリオン」に行った。10分ほどメニューと格闘していると、ウエイターが「一人分の料理選ぶのは難しいでしょう」と同情してくれた。その通りである。おいしそうなものがいっぱいでいろいろ食べたいのだが、一品頼んだらおなかいっぱいになってしまう。悩んだ結果、ゆで蟹一パイとシュウマイの詰め合わせを注文した。蟹は身がびっしり詰まってあまく、ものすごくうまかった。シュウマイもすばらしい味である。一人分にちょうどいい量であった。 こんなふうに成功するととてもうれしい。

例のあひるレストランに一人で飲みに行ったときにも似たようなことが起こった。鉄板焼きを食べようと思って、「どれぐらい大きな鉄板?」と聞いたら、ウエイターがでかい赤ん坊ぐらいのサイズを腕で示したのであきらめて白身魚のフライを頼んだ。これもお皿に7切れぐらい来るので、食べ終わって家に帰ると「ああ、今日は魚を食べたなあ」という印象で一日が終わってしまう。インドのちゃんとしたレストランでおひとりさまをマスターするにはもっと経験が必要みたいだ。

2つ向こうの席の男性客が小さなツマミの皿を取って、ビール片手にスティーブン・キングの新しい小説を読んでいるのが見えた。何を食べているのか気になったが、心の中で「師匠・・・」とつぶやくだけにしておいた。

3 comments:

  1. 日本はお一人様で外食天国ですね。
    14年ぶりに日本に帰って来て驚いたのは一人でレストランで食事をしている女性の多さでした。それっぽいおしゃれな(って言ってもたかが知れてるけど)レストランには一人でランチする女性でいっぱいよっ。
    昔はこんなにいなかったはずよ。

    話は変わりますが、この前とあるインド料理屋に行った時、隣の男性(インドの方)がイドリとフィッシャーキングを頼んで、10分も経たないうちに出て行ったことをなぜか思い出したわぁ。

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  2. ははは。「たかが知れてるおしゃれなレストラン」ってすごい想像つくなぁ。しかしなぜ日本はそんなにお一人様天国なんだろう?流行なのかな?

    アメリカではレストランで一人でご飯食べてる人いっぱいいた?

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  3. アイちゃん。
    アメリカでは以外にお一人さまで食べている人が少ないのです。
    一人で食べるなら外で買って家で食べるのが多いと思う。
    ちなみにあたしゃその行為を「中食」っていうって知らんかったわ。

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