January 1, 2009

ケララではねじを巻かない(1) Kumarakom Lake Resort

明けましておめでとうございます。去年はなかなかいい年だった。

2008年の締めに行ったケララはムンバイの時計を10倍ぐらいゆっくり回しているような、ゆったりした自然たっぷりの土地で、いっぺんに大好きになってしまった。この旅のおかげか、大晦日は心からリラックスして、安らかな気持ちで新年を迎えることができたような気がする。

村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」の中で、「日曜日にはねじを巻かないのだ」という言葉が出てくる。どこからか聞こえてくる、キリキリとねじを巻くような鳥の声が日曜日には聞こえないのだ。ケララでもその音は聞こえなかった。ねじがゆるみきってあとは惰性でゆるい坂道を進んでいるような様子であった。「私、ムンバイでは3速ぐらいで走ってるけど、ケララでは1速だな」と言うと、一緒に行った友達は「いや、ニュートラルでもいけるんじゃないの」と言った。

3日目に行ったKumarakom Lake Resortはのんびりしたちいさなリゾート地であった。歩いていると、どこからともなく不思議な鳥の声が聞こえてくる。橋を渡って川を越えるときに、青い羽をしたキングフィッシャーがマングローブの枝で休んでいるのを見た。ボートのドライバーに誘われて村を囲んだ川を回る。静かで、だんだん眠くなってくる。子どもが泳いでいる。鴨が家族で川を横切っていく。だれもがゆっくりゆっくり歩いている。みやげ物やも、オートのドライバーも、「要るの、要らないの?俺はどっちでもいいけど」って顔をしている。目を血走らせて客引きしている人なんか誰もいない。

KumarakomからCochinに向かうバスを待っていると、バススタンドで5人ぐらいのタクシードライバーが座っておしゃべりしていた。「バス、ここで待てばいいの?」と聞くと、「いいからいいから、そこに座ってのんびりしてたらいいから。バスが来たら教えてやるからさ」という。「ちなみに俺たちタクシードライバーだからいざとなったらタクシーに乗っけてあげてもいいけどね」と付け加える。でもなんだか、仲間でべらべら喋ってるほうがお客乗せるより楽でいいやみたいな雰囲気である。

体のどこかに入っていた力がすっかり抜けてしまった。ムンバイで、いつもたいして緊張して暮らしているわけではない。どちらかというとかなり普段から力が抜けているほうだと思う。思っていたのだが、ケララでの気持ちはまたそれとも違った。眠っているような感じで目が覚めているというような。心拍数がぐっと下がって、自然と深くてゆっくりした呼吸をしている。まるでヨガの呼吸法の訓練をやった後みたいな感覚である。その感覚が、不思議とムンバイに戻ってからも続いている。何かを習ってきたような、そんな感じである。

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