May 4, 2009

抜け毛予防シャンプーを買うな―女性の髪と石のフロア仮説

インドでは、なぜか女性用抜け毛予防シャンプーがやたらと販売されている。テレビでもあらゆるメーカーが抜け毛予防シャンプーを宣伝していて、「Hair fall防止80%!こんなに引っ張っても抜けません。」みたいなコピーをじゃんじゃん流している。日本ではあんまり女性用の抜け毛予防シャンプーは主流ではないのでなんとなく変だ、と常々思っていた。

なぜか。インドでは環境と気候のせいで髪が抜けやすくなるのだろうか、と最初は考えていたのだが、最近別の理由に気づいた。

私の仮説では、これは単純にインドの床が白い石作りだからである。実際、インドの家に住んでみると分かることだが、たいていの家は床が大きな白い石のタイルで敷き詰められていて、ピカピカ光っている。掃除をしないで3日も放置しておくと、床の上に落ちた自分の髪の毛が非常に目立って不快なのである。

しかも、これは長い髪をした女性だから、30センチも40センチもある黒い髪がぬらっと床に落ちているのが気になるのであって、男性の場合はせいぜい5センチぐらいの髪が床にぱらぱらしていてもあんまり目を引かない。しかもインド人の女性のほとんどが超ロングヘアである。だから、女性用の抜け毛予防シャンプーが10種類も棚に並んでいるのに、男性用のシャンプーはあんまりバラエティがないのである。

インド人女性はみんな「自分は抜け毛が激しい」とカン違いしているのである。日本の女性も同じぐらい抜けているのだろうが、床が茶色のフローリングだったり畳だったりするから気づかないだけなのだ。きっとシャンプーを作っているメーカーの研究者は、一日に抜ける人間の髪の毛の本数ぐらいは知っているだろうが、マーケティング的にそこは目をつぶって、シャンプー開発に努めているに違いない。

私も「うーん、どうもインドに来てから抜け毛が激しいなあ」と思って抜け毛予防シャンプーを買っていた一人である。しかしこの単純な理屈に気づいて、そうかそうか、と思ってちかごろ普通のシャンプーに変えた。思い込みというのは恐ろしい。A+B=Cという単純明快、誰から見ても当たり前に見える事実が実は仮説の一つに過ぎない場合もある。ちょっと突っ込んで考えればわかったのに、ということには、たいていずっと後で気づく。気をつけなきゃいけないなあ、と思いつつ、ついつい素朴理論に頼って毎日をやりすごしているのである。

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