May 1, 2009

手紙だけの夫婦愛は成り立つか? ―The Japanese Wife

“Japanese Wife” という短編小説集が、インドの本の全国チェーン店CROSSWORDの2008年ベストセラーに入っていたので買ってみた。表題の作品は、映画化されて今年度公開予定らしい。

雑誌の文通欄で知り合ったインド人の男と日本人の女が、一度も会わないまま文通だけで結婚し、手紙だけのやり取りで夫婦生活を送るという、あるいみでは特殊な愛の話だ。とても短い静かな小説である。ラストがなかなか印象的でよかった。

プラトニックな男女の愛が一生終わらず続く、という状態がどういうものなのかあんまり想像がつかないのだが、ひょっとしたら長く結婚生活を送った経験がある人にはわかる世界なのだろうか。それはいったい友情とどう違うのか。なぜわざわざ結婚という形をとってお互いを縛るひつようがあるのか。などと、お話とはわかっていながらいろいろ想像をめぐらしたりして、ついついまたワイドショーの視聴者状態である。

ちょっと飛躍するようだけれど、結論としては、なにをよしとするかは自分にしか分からないものだ。どういうスタイルで生きるかというようなことは、人の意見を聞いてもどうしようもないことであって、誰にどう思われようと思ったように勝手にやるしかない。小説の主人公たちも、「手紙で子どもはできないだろ」などと周りから突っ込まれるのだが、特に気にしない。すると周りもそれを見ていてだんだん、「あ、これもありなのか」と納得してしまうのである。

昔、古い友人が就職活動のときに就職先に迷って電話をかけてきた。職業相談の担当者に、「周りの人のほうがあなたを分かっている。だから古い友人10人に電話をかけて、どの仕事がむいているか意見を聞いてみなさい」と指導されたという。私は大学で職業指導を選考したので、そんなあほなアドバイスをしている担当者はどこのどいつだ、とびっくりしてしまった記憶がある。

この人と結婚して大丈夫だろうか、この仕事を選んで後悔しないだろうか、などと聞かれたって答えようがない。決断が「正しい」かどうかがポイントではないからだ。私たちは何もウルトラクイズをやっているのではない。

これで自分がハッピーになれるはずがない、とすっかり分かっていながらも選ばざるを得ない道もけっこうある。結局のところ、AからC、どのドアに飛び込んでも地獄である。粉まみれでも、水びたしでも、泥沼でも、どれにしても難儀なわけなら、まあ選んだ瞬間に楽しいものに行ったらいいんじゃないかと思う。あとのことは分からない。

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